INSTRUCTOR INTERVIEW

飯尾亜希さん
現場にこだわってレッスンを行っていきたいと思っています
飯尾亜希さん
健康運動指導士
JAFA/ADI
神奈川を中心に、エアロ、ステップ、RI TMOSを指導

今回ゲストとしてお迎えしたインストラクターは、神奈川を拠点に20年に渡り精力的に活動を行っている飯尾亜希さんです。立秋が過ぎ暦の上では既に秋を迎えているはずの8月下旬にも関わらず、真夏の陽ざしがその存在感を誇示し続ける中での今回の取材となりました。まずは、恒例となった屋外でのカメラ撮影のため、撮影ポイントを探す飯尾さん、カメラマンの長塚さん、そして私の3人。容赦なく照りつける陽射しに、皆一様に全身から汗が噴き出す中、ようやく撮影ポイントが決まり撮影を開始。そんな酷暑の中、カメラのレンズを見つめる飯尾さんの目は暑さをものともしない物凄いパワーを放っていた。カメラマンの長塚さんも、「すごくいい目ですね!」と私の感じた事に同調するかのように声をかけると、こう笑い飛ばす飯尾さん。
 「私、写真を撮って頂くときに、『目力を抑えて』とよく言われるんですよ」
 目に力がありすぎて、カメラのフレームに収まりきらない程のエネルギーを発してしまうらしい(笑)。そんな目力抜群の飯尾さんがこだわりをみせる活動地区に“西湘”と呼ばれる地区がある。
“湘南”という地名はみなさん耳にしたことがあると思うが、その湘南の西に位置するのが西湘エリアである。小田原市、箱根町、真鶴町、湯河原町を指して言い、神奈川の西の玄関口として観光や漁業などを中心に栄えた地区である。フリーインストラクターになった当初からこの地区でレッスンを担当しているというが、西湘エリアでレッスンを行う事に何かこだわりや理由があるのだろうか。
 「自宅がこの地区から車で30分ほどの距離という事もあるのですが、都会にはない地域に根ざした活動がここではできるんですね。お客様と密にコミュニケーションが取れ、先生と生徒という立場を超え、同じ地区に生活するもの同士の共有の場という意識の中で、一人の人間として自分自身も成長できるこの環境での活動にやりがいを感じています」
 そう話す飯尾さん。意外と言ったら怒られそうだが、意外だった(笑)。というのも、最近ではコリオ系のDVDに出演したり、イベントやセッション等にも講師として招聘されることも多くなっており、彼女の仕事へのモチベーションはどちらかというと“トレンド”を意識しているのかと勝手に思い込んでいたからだ。
 「確かに表立ったお仕事もさせて頂き、大変勉強になってはいるのですが、私自身の気持ちとしては、有名になりたいとか目立ちたいとか、華やかな場で評価されたいという欲はなく、ましてやそこを目標にしていません。もちろん経験としてそういった事も重要だと感じ、オファーを頂ければ喜んでお引き受けさせて頂いています。ですが、私の仕事のベースはやはり地域での現場レッスンです。いろいろと経験をさせて頂き学んだことを、何年も私のレッスンに足を運んできてくれているお客様に指導させて頂き、少しでも成長した姿をお見せすることが何よりの喜びですね」
 先ほどのカメラ撮影時とはまた違った、物柔らかな表情で話してくれた。
 しかし、次の瞬間いたずら好きな子供のような顔になり
 「小田原は私が牛耳る!」
 と、おどけて冗談を言う飯尾さんのジョークセンスに取材中終始腹を抱えて笑いっぱなしだった。首都圏のフィットネスクラブ激戦区で活動を行う事に全くステータスを感じていないときっぱりと言い切る飯尾さんがとても頼もしく思えたのは、昨今の若手、中堅インストラクターの将来ビジョンが表面的な事にとらわれているように感じているからだろうか。“著名なインストラクターになりたい”、“世界のトッププレゼンターになりたい”など、志の高い素晴らしい目標であることは間違いないのだが、それらはインストラクターとして短期的なビジョンでしかないことは言うまでもない。運動指導者として歩むための、中・長期的ビジョンのファーストステップと考えなければ、この仕事を行う上で本質的におかしなことになってしまうのではないかと私は危惧している。あくまでも私見だが、フィットネスインストラクターはあくまでも運動指導者であり、それ以上でもそれ以下でもない。ましてや、パフォーマー、デモンストレーター、ナレーターとは異なるはずだ。もちろん、要素としてそれらが必要であることは私も経験的に分かってはいるが、やはり本質を忘れた目標、ビジョン設定はこの仕事に対し早い段階で虚脱感を抱いてしまうのではないかと心配する。飯尾さんはそんなインストラクターの目標設定を冷静な目で見て語ってくれた。
 「それはそれでいいと思いますよ。いつか気づいて軌道修正しますよ。私達だって若かった時はそうだったはずです。今だから思えるんじゃないですかね」
 と、飯尾さんに諭されてしまった。
 「ただ、私達には私達にしかできない役目があると思うんです。それは、勢いのある若いインストラクターがカバーできない層に対して、安全で効果性の高い運動をアプローチしなければいけないんです」
 現在、週間14本ほどのレッスンを指導しているという飯尾さん。その内の半分近くが初心者・初級者指導だというから、まさにその役目を実行に移している。
さて、そもそも飯尾さんがこの仕事を始めたきっかけは何だったのだろうか。
「この業界でインストラクターをしている人は大抵そうなんではないかと思いますが、子供の頃から運動が大好きで、中・高の6年間はバスケットボール中心の生活で常に体を動かしていました。そして、気がついたら体育の専門学校に入り、フィットネスクラブでアルバイトをする人生が始まっていました(笑)」
 フィットネスクラブのアルバイトはジムスタッフとしてだったというが、ジムから覗うスタジオの楽しそうな雰囲気を見て、エアロビクスインストラクターになることを決めたという。その後4年間、フィットネスクラブの社員を経験し、24才の時にエアロビクス一本で勝負したいと決心し、フリーとしての活動を始めた。そんな飯尾さんのクラスは、彼女の明るさそのままの本当に笑いの絶えないクラスで、見ているこちらも楽しくなってくる。飯尾さん自身、クラス中のお客様とのコミュニケーションはかなり意識しているとのことだが、そのコミュニケーションを通じて、本質的な運動指導を行っていきたいという確固たる信念があると話してくれた。
 「エアロであろうがダンスであろうが運動です。当たり前のことですが、運動の効果も危険性も分かった上で指導し、そしてみんなで楽しむ。しかし、グループエクササイズは理論上のマニュアルだけでは絶対に通用しませんから、お客様とのコミュニケーションをしっかりとって、いろんなご意見やニーズを引き出し、そして正しい運動を提供していきたいと思っています」
最後に今後の展望を伺った。
 「やっぱり私は地域で運動を必要としている方々に対しての活動が向いていると思っています。ですから、これからも現役のインストラクターとして、神奈川県下を中心に現場にこだわってレッスンをしていきたいと思っています」
 一時期、養成コースのお手伝いをしたこともあったというが、客観的に自身の適性を判断し教育の現場は退いた。それ以来現場一筋を貫いている。地域活動は今後ますます重要性を増してくるはずだが、飯尾さんにいつまでも地域と現場にこだわった活動を期待し、今回の章を終わりたいと思う。






取材後記
コロコロと変化する表情、会話の緩急、身振り手振り、そして時に毒舌などなど、完全に飯尾さんのペースで進んだ今回の取材だった。過去に私のレッスンを受講頂いた事はあったが、ゆっくりお話をするのは今回が初めて。本当に楽しい時間を過ごせた。出世欲が全くなく、肩の力が抜けた自然体の飯尾さんならではの、今と昔が絶妙にブレンドしたレッスンスタイルはお勧めだ。彼女には、これからも唯一無二な存在として活躍していって欲しい。

INTERVIEWER 丸山 寛

丸山寛
有限会社スポーツゲイト代表取締役社長
有限会社スポーツゲイトホームページ
URL:http://www.sportsgate.co.jp
個人BLOG:http://sportsgate.blog81.fc2.com/