INSTRUCTOR INTERVIEW

木原 啓貴さん
小さな目標を立て、一つずつクリアしていく
木原啓貴さん
・アスリエエアロビクスアドバイザー
・エアロビクスユニット「Dreamer」
・「Daking Dance」オフィシャルダンサー
・LA BODY契約ライダー
オフィシャルブログ
http://www.runkiryu.com/kihara/

「いい表情ですね!」、「うん、すごくいい!」
小気味良いシャッター音が、住宅街の静寂の中に微かに響く中、今回のゲスト木原啓貴さんにカメラマンの長塚さんがかけた言葉だ。決してカメラマンさんお得意のリップサービス的なそれではないことは、長塚さんの声のトーンから読み取れる。私から見ても、木原君は本当に良い表情をして写真に収まっている。太陽が西に傾き始めたとは思えないほどの強い日差しの下でも、ギラギラした感がなく、肩の力が程良く抜けているその表情。そんな木原君の顔を見ていて、早く話を聞きたいと思った。しかし、インタビューを開始すると開口一番、「僕と話しても何も面白いことないですよ!」と笑顔で言うその言葉を聞いて、余計話が聞きたくなった(笑)。
木原啓貴、33歳。インストラクター歴は10年になるという。この連載を書き始めた当初から、木原君にはいつか登場してもらおうと、私なりにその時期を考えていたのだが、直感的にこのタイミングだと思った今回が、インストラクター歴10年目という木原君にとって節目の年になったことは、何かの縁なんだと勝手に思わせて頂くとして、まずは彼の現在の活動状況から聞いてみた。
「今はエアロ、ステップ、リトモスなどのレギュラーレッスンを週14本、その他はステップの養成コースやスキルアップスクールの講師、イベント出演などの活動をさせてもらっています」
レギュラーレッスンの数については、今後減らしていくつもりだということだが、それには何か理由があるのだろうか。
「現在、法律や会計関係の勉強をしており、そちらにもっと時間を割きたいというのが、一番の大きな理由です」
大学では法学部に在籍していたという彼なら、法律や会計関係に興味を示す事も頷けるのだが、特にそれは関係ないらしい。
「法学部と言っても、何か将来的な目標があった訳ではなく、ただ単純に就職に有利かなと思い偏差値の高い法学部を受験したんです。なので、その当時は法律を学んだという感覚はほとんどなくて、今、会計や法律を勉強したいというモチベーションとはかなり違うんです」
では、今のモチベーションはなんなのだろう。
「将来的に、業界分析やコンサルタント業に活かせないかと思っています。他業種と交わりを持ったビジネスには大変興味があるので、来たるべく日のための準備として行っています。必ず、今勉強しているスキルは必要になってくると思っています」
木原君は将来のビジョンを描き、それに向かってどう行動したらよいのかと、常に考えているという。
「小さな目標を立て、一つずつクリアしていく。それを積み重ねていけば、自ずと道は開けていくと信じて、行動するようにしています」
そんな彼にも、ジレンマがないわけではない。
「今はどうしても環境に動かされている部分があります。目指している方向とのギャップを感じながらも仕事をすることは、今はまだ仕方ないとは思うのですが、これも少しずつ変えていかなければ、自分が描いているビジョンには到達できないと思っています」
数年前までは、“来るお仕事拒まず”の状態で全て引き受けていたというが、今では仕事の内容を吟味し、そして体調とも相談して、引き受けるかどうか決めているという。今回、話を聞いている中で、大変印象的なフレーズを木原君は口にした。
「自分は有名になりたい訳ではないし、イベントインストラクターでもない」
目標が有名になりたいのなら、形振り構わず、方向性がずれていようがとにかく目立つ仕事はなんでもやるべきだったりするのだろうが、彼の将来ビジョンは明確にそこにはない。しかしながら、フリーランスで仕事をしている以上、報酬は完全歩合であり、保障された賃金はゼロである。その中で、“仕事を選ぶ”というのは大変な勇気がいることだが、彼の信念は揺るぎないものがある。「レッスンの単価を上げることや本数を増やす、または雑誌やイベントに出演することだけが、インストラクターの価値やステイタスではないと思うんです」
はっきりと言ってみせたその表情は、写真撮影の時と同じようにとても充実した良い顔をしていた。さて、そんな木原君の幼少期はどんな少年だったのだろう。
「食べることが大好きで、中学生までは肥満児だったんです。保健室に呼び出されて、先生から直々に注意を受けるほどでした(笑)。でも、スポーツは大好きで特に球技は得意でした」
今の木原君からは、“肥満児”だったことなど到底想像もできないが、スポーツ好きが高じて、高校一年の時には自然に痩せたという。性格的に“はまりやすい”との事だが、これまでに卓球、バスケ、サッカーなど、得意の球技を中心に様々なスポーツを行ってきたという。特に卓球の腕前は、中学生の時に都大会でベスト16まで勝ち登る程であったというのだから大したものだ(東京都の人口を考えると、他地区であれば優勝争いに食い込めるレベルにあると想像できる)。
 最後に、フィットネスインストラクターについて何か思うことはない?との問いかけに、しばらく考えた末、ゆっくりと話し出してくれた。
「インストラクターの挨拶や受答えなど、マナー全般が乱れている場面を目にする時があります。一般社会では通用しないようなこともあったりするので、フィットネスインストラクターはもっと社会的な常識バランスを持って欲しいと思います」
当たり前の事であるのだが、確かに木原君が危惧する事を私も目に、耳にする場面に出くわす。お客様を『メンバー』と呼び捨て、『元気・?』などと、馴れあいの挨拶を行う。フリーインストラクターというのは、紛れもなく個人事業主であり、クラブに雇われている場合、完全なる下請けである。その下請けが親会社の大切なお客様に対して、失礼な態度、言葉遣いをすることなど、本来であれば死活問題のはずだ。
挙句の果ては、その親会社の社員に対してまでも失礼な言葉遣いをするインストラクターがいるのだから、木原君が心配することも頷ける。他業種交流会などにも参加し、多くの“社会”を見てきている木原君であればこその視点だが、今後、木原君のような社会常識を兼ね備えたインストラクターが増えて行くことを願い、今回の章を終わりたいと思う。






取材後記
彼のレッスンは“職人技”と言っても過言ではないくらい、本当にうまい。ブレイクダウンの緻密さ、動きの正確性、そして軽妙なインストラクションテクニック。3拍子揃っているとはこういうレッスンを言うのだなと、毎度、関心させられる。そして、今回お話を聞いて改めて思ったのだが、目先の事だけにとらわれていない。おそらくレッスンインストラクターとしてだけでも、向こう10年の成功は間違いない
と思うのだが、それだけでは飽き足らず、自分の可能性を信じて、どうやって自己発展させるかという事にエネルギーが注がれている。そんな木原君の話を聞いていて、40歳になった私も、『もうひと踏ん張り…(汗)』、という気持ちにさせられた。

INTERVIEWER 丸山 寛

丸山寛
有限会社スポーツゲイト代表取締役社長
有限会社スポーツゲイトホームページ
URL:http://www.sportsgate.co.jp
個人BLOG:http://sportsgate.blog81.fc2.com/