INSTRUCTOR INTERVIEW

石塚 直樹さん
今一番幸せと感じる場所がフィットネスの現場なんです

フィットネスインストラクター石塚直樹。今年でインストラクター歴17年目を迎えるというが、私は昔から彼には何か引き付けられるものを感じる。その証拠に、彼の周りにはいつもたくさんの笑顔がある。同僚も先輩も後輩も性別も年齢も問わず。みんな、彼を取り囲むように、ワイワイ、ガヤガヤ、賑やかだ。彼もそれが心底嬉しいというが、彼のこの魅力の原点は何か。早速、子供の頃の様子から聞いてみた。

「4、5歳の時は、幼稚園や保育園にも通わず、毎日、空手の道場に通って稽古をしていましたね。小学生になると、サッカー、野球、バスケット、水泳も習い始め、朝から晩までくたくたになるまでとにかく体を動かすことが大好きなヤンチャ坊主でした(笑)」。

運動のほかにもピアノ、英語、絵まで習っていたというから子供ながらに凄まじいスケジュールだった事は間違いない。それも、全て本人がやりたいと始めたというから、これまた凄い。当然自分から始めた習い事なので、辛いなどと思ったこともないだろうが、翻って親御さんの立場になって考えてみると、色々な面でのご苦労もあったのではないかと思う。

「確かに、両親は大変だったと思います…」。と、言って少し間をおくと、「今まで、フィットネス業界関係者には殆ど話したことはなかったのですが…」と、言葉を選びながらご両親のことを話してくれた。

「実は父親は、安心して住める街づくりのお手伝いや、地域の方々の様々な相談にのり、それらの実現に向けて区や都、国に働きかけるような政治活動を、20年ほどしてきた人なんです。常に地域の方々からの期待や要望を一身に受けて生活をしていかなければいけないというのは、相当なプレッシャーだったと思います。父の仕事は想像をはるかに超える壮絶なものでしたので、当然、そんな父をサポートする母親も大変だったろうと思います」

彼は、ご両親の話をしている間、幾度となく、「両親には感謝している」という言葉を口にした。彼の性格形成や現在の活動についても両親の影響はかなり受けていると言い、とりわけお父様の影響は大きいとのことである。

「父は、やると決めたら最後まで絶対諦めないで遂行する人なんです。小さい時からそんな父の姿を目の当たりにして育っていますので、中途半端なことだけはしたくないという思いで、今まで生きてきたつもりです」
お父様は、彼の今までの生き方について、唯の一度も反対をしたことがないという。裏を返せばそれは息子への信頼であり、自分の生き方の押し売りはしたくないという事なのであろうか。私も恥ずかしながら小学生の子を二人もつ父親であるが、つい、「お父さんの小さい頃は…」、「お父さんはこう思う」などと、ついつい、自分の経験や考えを押しつけてしまう傾向にある。子供の考えや行動に対し、口を出しすぎないことが、どれだけ大変で我慢が必要なことかは身をもってわかっているだけに、石塚君のお父様には頭が下がる思いである。
さて、話は変わるが、私の石塚君への思い出話をさせていただく。彼との出会いは正直いつ頃であったか定かではないが、かなり前から毎年一回東京体育館で会うというのが、通例になっていた。連絡を取り合って落ち合うわけではなく、ただ私は家族でエアロビックの大会を観戦に行っていたのだが、毎年必ず石塚君が挨拶に来てくれる。それも、東京体育館の3階席の一番後ろの席まで、わざわざ階段を歩いて昇ってきてくれ、「こんにちは!」と私なんぞに体を90度に折りたたんであいさつをしてくれる。そして、数分お互いの近況について話すと、また下の階に下りていくということが何年も続いた。

今では東京体育館に大会の観戦に行くことはなくなったが、その代わり彼とは仕事で一緒になることが多くなり本当に嬉しく思っている。今でも彼の印象はあの時の誠実なままであり、その一例ではあるが、仕事で一斉メールをした時の返信スピードは常にトップを争う。さらに返信メールの文章には「いつもありがとうございます」という言葉が必ず付け加えられている。彼のこのような行動や発する言葉のルーツは、御両親の姿を見てきた結果なのだと、今回のインタビューで分かったような気がした。

石塚君は3年前に結婚し、さらに株式会社HEARTBEATING(以後HB)いう会社も立ち上げた。公私ともに一国一城の主となったわけだが、会社の代表としてのビジョンを聞いてみた。
「会社を立ち上げて1年目ということもあり、今は人材の教育、確保に力を注いでいます。とにかくHBに多くのインストラクターやお客様が関わってくれるよう、たくさんの仕掛け作りをしています。例えば、インストラクターの養成コースや、デモンストレーションチームの結成、競技エアロビック 大会出場を目指す方のためのスクール、そして、インストラクター向けのワークショップなども開催しています。私個人の活動としては、ラディカルフィットネスのマスタートレーナーやスポーツクラブのアドバイザーとしても、活動の場を広げています。さらには私自身が幼少期から行っている阿波踊りの連(※)を作ったりなど、多くの人間を巻き込んで、みんなで楽しもうというのがコンセプトになっています」
ワークショップでは、若手インストラクターも積極的に講師として招聘し、どんどん前に出る場所を作ってあげたいと石塚君は言う。
「若いとか、フィットネス経験が少ないということは大きな問題ではなく、良いものは良いというシンプルな発想で考えています」
最後に、フィットネスに対する石塚君の思いを聞いてみた。「私は、とにかく『心が幸せ』でありたいと思っています。そのための手段の一つがフィットネスだと思っています。ですので、フィットネスにこだわっているわけではなく、今一番幸せと感じる場所がフィットネスの現場なんです。この幸せ感をHBに関わる全ての人に共有してもらえるよう、頑張っていきたいと思っています」
何度も何度も、「みんなで幸せになりたい」と繰り返し話していたのが非常に印象的であった。フィットネス業界のみならず、日本中、いや世界中を彼のビッグスマイルで幸せにしたもらいたいと願う。

※連:阿波踊りでは、それぞれのチーム名の最後に「・連」と表記をする。ちなみに石塚君のチームは「心舞連」(しんぶれん)という。






取材後記
石塚君の空気感は独特の流れがあると感じるのは、私だけだろうか。普段は感情を大きく表に出さないが、それがレッスンともなると180度変貌する。お客様を巻き込み、強いリーダーシップを発揮する。ONとOFFの使い分けの妙なのか、いつも“心”の置き所を心得ているように見える。今回のインタビューでも、一言一言噛み締めるように丁寧に気持ちを込めて話してくれた。 彼の将来ビジョンは、最終的には裏方に回り多くの後輩を育成していきたいというが、私としては、まだまだセルフプロデュースに時間を使ってもらい、石塚直樹という人間を通じて、“幸せ”に感じる人たちをたくさん作ってほしいと願っている。

INTERVIEWER 丸山 寛

丸山寛
有限会社スポーツゲイト代表取締役社長
有限会社スポーツゲイトホームページ
URL:http://www.sportsgate.co.jp
個人BLOG:http://sportsgate.blog81.fc2.com/