成功するためのセールススキル

マーケティング思考を養う顧客創造のヒント
伊藤友紀
(株)フィットネスビズ代表取締役社長
プロサッカー選手を目指すも挫折、フィットネス業界ではトレーナーやマネージャーを経験し、開業集客などを多数担当。現在はクラブ運営と収益改善のコンサルティングを実施。得意分野はマーケティングとマネジメント。




第2回 (NEXT88号掲載)


 皆さま、こんにちは。今回も事例を交えて顧客創造につながるキーワードを取り上げます。
 先月の日経産業新聞にはアメリカの面白い取り組みをしているスタートアップ企業の幾つかが紹介されていました。そのなかにひとつ、ここで取り上げてみたいと思うものがありました。それはいま使っている普通の自転車を、後付けで簡単に電動自転車に転換できるという商品です。もう少し具体的に説明すると、手持ちの自転車の後輪を替えるだけで電動自転車になるというシロモノです。仕組みとしてはブレーキをかけた時に発生する回生電力を蓄電し、動力源に変えるようになっています。後輪の軸についた装置には蓄電池や速度調整などのセンサーが付いており、無線でスマートフォンと連動して電動アシストの度合いを制御するとのことです。後輪を替えるだけなので欧米における従来の電動自転車と比較をすれば、価格は約3分の1に設定されています。早速に注文が舞い込んでいるようで、これは画期的な商品で見事に顧客を創造している例ですね。ここにおける顧客創造のキーワードは「後付けでの機能拡張」です。ここで言うところの「後付け」とは、既存商品からの買い替えをせずとも、既存商品に何かをプラスするだけで良いというものです。それだけで対象商品の機能を従来よりも拡張させる、向上できる点がポイントになります。これは大きな出費をして買い替えをするまではしないけれど、「わずかな金額で」しかも「簡単に」機能が追加でき、モノが使いやすくなるのであれば、買ってみたいというニーズは存在します。
 このような商品は私たちの身の回りを見渡してみれば、いろいろなものが該当することに気が付くはずです。例えばパソコンにおけるメインメモリの増設などもこれに当たります。これはメモリを増設することによって新しいパソコンに買い替えることもなく、パソコンの処理速度などを高めることができるものです。その他、このような観点で捉えるとシューズに入れるインソールなども同様な側面を持っていることが分かります。自分の持っているシューズに後付けでインソールを入れるだけで、履きやすさを改善したり、障害の予防ができたり、といったことです。
これらの例で少なからず理解が進んだと思いますが、後付けによる機能拡張というものは顧客創造におけるひとつのキーワードになります。その他、補足として冒頭に紹介した電動自転車の場合は後付けの機能拡張に加え、それを「他にはない手段で」「初めて提供した」ことによって、さらに魅力を高める要素になっています。
 こういった要素が加わると、より顧客創造の度合いは高まります。トレーナーの皆さまには今回のキーワードをフィットネスクラブに置き換え、既存会員さまへの有料プログラム販売や新規入会者等の顧客創造について自分なりに考えを巡らせてもらえればと思います。




顧客接点を上流に(NEXT86号掲載)


 今号からこちらのコラムを担当させて頂くことになりましたフィットネスビズの伊藤です。

 こちらのコーナーでは顧客創造につながるキーワードを各回でピックアップし、トレーナーの方々にマーケティングを身近に感じてもらいながら、自分のクラブ運営やパーソナルトレーナーの活動について考えるきっかけになれば、というものです。

 早速ですが、今回のテーマは「顧客接点を上流に」です。多くの産業では市場が成熟して顧客獲得が難しくなっている状況があります。そのようななか、顧客創造の手段として他業態でよく見られるもののひとつが顧客との接点箇所を従来と変えるアプローチです。

 例えばフォトスタジオのスタジオアリスです。同店の主な顧客は0 ~ 7歳児を持つ親が対象で、その間の誕生日や七五三での撮影が売上の中心です。スタジオアリスでは、その顧客起点を従来よりも上流に置くことで、前述したメインゾーンに流入する顧客を増やすアプローチをしています。具体的には出産を控えた女性を対象に育児セミナーなどを無料で開催し、そのなかで妊婦姿などを同じく無料で撮影してプレゼントをしています。将来の顧客対象である妊婦の女性に対し、出産前にアプローチをしてスタジオの存在やお店・スタッフの雰囲気を知ってもらうことで、産後の来店を促しやすくすることが狙いです。これにより同スタジオでは無料セミナー以外での有料での妊婦の撮影が5割増えたほか、産後1歳未満の子供の撮影は8%増えたという定量的な成果も報告されています。

 また最近では結婚式場運営のテイク&ギブニーズが結婚相談所大手のIBJと提携をしました。これはIBJの結婚相談所で結婚を決めた顧客に対して、テイク&ギブニーズの結婚式場を紹介してもらうというものです。従来のように結婚式場を探す段階でのアプローチから顧客接点をより上流へ置き、結婚相談所で結婚に結び付くカップリングが成立した時点で式場を紹介してもらう形にしています。これにより他社に先んじて対象者にアプローチをすることができ、確実に選択肢のひとつに加えてもらおうとの意図だと思います。

 このように「現在の商品やサービスを提供している場から顧客接点を上流に置いてアプローチをすること」で新たな顧客創造を行うのが、ここで意図するものですね。これを皆さまのクラブやスタジオ、パーソナルトレーナーとしての状況に置き換えてもらうのが良いでしょう。換言すれば現状の顧客接点をベースにしつつ、顧客創造につながるようなコンタクトを新たにどこかへ設けることができないのか、というものです。皆さまの置かれた状況にあわせ、顧客創造について思索するきっかけにしてもらえればと思います。