成功するためのセールススキル

[連載]トレーナー業界の摩訶不思議?常識
木内周史
S.Dream有限会社代表、NESTA JAPAN理事、太田情報専門学校講師。
「Drive your HEART&BODY」をテーマにパーソナルトレーナー、チームコーチ、クラブスーパーバイザー、メーカーコンサルタント活動中。雑誌、DVD、TVCM出演多数。


第16回 「体幹が一番?取り敢えず体幹?」の巻(NEXT88号掲載)

  皆様、こんにちは! 今回のテーマは、未だ衰えを知らず定番の様相を呈している「体幹トレーニング」ブームについて。ずばり、「アンチ体幹トレーニング」です。今回も衝撃十分?! でいきます。
 私も流行の兆しが見え始めた10年程前から体幹トレーニングに着目していましたし、著名なトレーナーの方々のセミナーに幾度となく参加し、書籍も読んできました。そして、専門書籍の執筆や編集協力を行ってきました。そんな中で見つけた共通点や、気になったことを書いてみたいと思います。
 まず、様々な人の話を聞いているのに「まぁ~同じ内容ばかり!」ということです。数年前の話ですが、異なる二人のオリンピックメダリストトレーナーのセミナーに2ヵ月連続で参加しました。驚いたことに、打ち合わせをしていないはずの2人の指導内容はそっくり!何故なら、同じアメリカ人メジャートレーナーのメソッドの受け売りそのものだからです。つまり、勉強している人なら知っていることなのです。2回共メダリストにまで育て上げたトレーナーの独自の体幹トレーニング法を聞けるのであろうと楽しみに行きました。そこにはオリジナリティに満ちた創意工夫がいっぱいだと思い込んでいましたが、そのような話は一切出てきませんでした。興味津々で参加したので非常に残念だったことを良く覚えています。
 一般的に「体幹トレーニング」は、欧米特にアメリカ、ドイツ発のメソッドが多く目につきます。ずっと武道をやってきた人間からすると寂しい限りです。僕自身は、通常とは異なる形と型で行っています。基本的に「マットではなく、止まらず、ドローインしない」。「立って、動いて、ブレーシングまたは脱力」といった方法です。何故なら、日常動作も運動もスポーツも立位が基本、動いてナンボ、ドローインなんてしてない、という極めてシンプルな理由です。しかし、効果は抜群です。 もう一つ気になることが…。それはより根本的な問題として「何故、体幹?」ということです。実際の動作では、目的のほとんどが手足の操作です。大切なのは実際に動作を行う手足であり、体幹を鍛えることはそのための手段にすぎません。足で早く走ったり、蹴ったり、手で投げたり、打ったり、掴んだりするために体幹が重要になるわけで、最終的な目的地点は手足であることがほとんどです。果たしてその手足の骨・筋・神経などに対して、どれほどの造詣があるでしょうか?当然のごとく全ての骨の名称や特徴、関節の種類や形状、筋肉については最低50以上の付着に対しての知識は欲しいところです。その上で、フットやハンドのコンディショニングのバリエーション(セルフ&パートナーストレッチ、筋膜リリース、レジスタンストレーニングなど)をどれだけ持っているか。それらを知った上での体幹トレーニングであるなら大いに結構ですが、残念ながら世には「体幹限定スペシャリスト」が多いように感じます。『流行の体幹トレーニング』だけではなく、今より少しでも、ハンドやフットなどの軽視されがちな、でも大変重要なコンディショニングに光が当たることを願ってやみません!



第15回 「恐怖の低炭水化物ダイエット」の巻(NEXT86号掲載)

 食事指導の現場でよく聞く「炭水化物は抜いていきましょう!」といった、俗に言う炭水化物抜きダイエット。アトキンスダイエットとも言われ、欧米では最も危険なダイエットのひとつとして知られています。現に、低炭水化物ダイエットの提唱者であり、実践者でもあるロバート・アトキンス博士は心臓病で亡くなっています。死亡時の彼の体重は117kgで、高血圧も患っていたといいます。

 ですが、低炭水化物ダイエットで痩せた人がいるのも、低炭水化物で痩せるのも事実です。日本人は平均すると食事総エネルギーの60%前後(理想は65%くらいだと思います)を炭水化物で摂取しているわけですから、それらを抜くことで痩せるのは当たり前。しかし、炭水化物は体内でも特に大切なメインのエネルギー源です。健康に生きていく上で欠かせない栄養素です。

 体内には400 ~ 750g程のグリコーゲンが蓄えられており、主にこれらのグリコーゲンからエネルギーを生産します。体内に一定量プールされているはずのグリコーゲンがファスティングなどの特別な状況下以外で貯蔵されていない場合、効率的にエネルギーを生み出すことはできません。エネルギーが生み出せないということは、摂取した物をエネルギーに変換できずにそのまま蓄えられてしまうかもしれないということ。つまりここでの答えは、炭水化物を摂りましょうということです。

 そもそも、巷で低炭水化物ダイエットを勧めているトレーナーの多くは、炭水化物の定義すら知らない人も多いのが現状です。炭水化物は、単純炭水化物と複合炭水化物の総称です。単純炭水化物は、単糖類、二糖類、三糖類、少糖類から、複合炭水化物は多糖類、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維からなります。単純炭水化物の中でも、単糖類と二糖類をまとめたものが、糖類と呼ばれます。

 低炭水化物ダイエットをするということは、食物繊維の摂取も抑えるということになります。炭水化物といえば、ご飯やパンなどをイメージしがちですが、野菜類も水分を除けば構成成分のほとんどが炭水化物ですので、低炭水化物ダイエットは、アトキンス博士がそうであったように、野菜の摂取も制限していくものなのです。

 この言葉の定義がわかっていれば、食事指導はより明確で的確なものになります。避けるべきは炭水化物ではなく、一般的に使用されている砂糖などの糖類なのです。また、白米や精製された小麦粉などは、胚芽部分を削ってしまっているため食物繊維や糖代謝に重要な役割を果たすビタミンB群などが消失されており、到底良質な食品とは言えないため、一般的には玄米や全粒粉の小麦粉の摂取が有効です。玄米や野菜などの良質な複合炭水化物は、食物繊維やビタミン、ミネラルの貴重な摂取源ですので、主食として摂取するべきです。

 正しい知識、言葉の定義を知ることで見えてくる真実がたくさんあります。プロフェッショナルとして食事指導をするのであれば、正しい情報を是非伝えていきましょう。炭水化物の摂り方を改めるのは素晴らしい発想なのに、なぜか極端なことをしてしまうケースが多いのです。是非、明日からは、高複合炭水化物ダイエットの指導に切り替えてみて下さい。



第13回 「みんな大好きドローイング!」の巻(NEXT82号掲載)

 皆様、こんにちは。スポルテックが終わると1年の終わりを感じます。今年は、30日まで仕事、31日はゴルフ。新年は3日から仲間内での「新春スクワット1,500回!」、4日から本格的な仕事です。正月は2日しか休みがないので、ホッとしています。休みが多い年は調子が狂い、元に戻すのに時間がかかります。いつものリズムを守るのが健康の秘訣ですよね!

 今回のテーマは、「ドローイン(ドローイング)」(腹横筋の分離収縮運動)です。クイーンズランド大学のポール・ホッジス教授らが発表したドローイン(マニューバー)は、世界中でトレーニングの基本のような扱いをされる向きがありました。ここ日本でも体幹トレーニングの流行とともにもてはやされ、姿勢矯正やダイエットにまで効果があるという専門家まで現れました。しかし、元々ホッジス教授は、理学療法と神経科学の博士で、失禁や呼吸障害を持つ人々、様々な外傷によって脊椎のコントロールの困難な人々を対象にした本格的なリハビリテーションのスペシャリストです。我々、フィットネスやスポーツの現場で働くトレーナーにとって、どれだけそのような方々に遭遇する機会があるでしょうか。勿論!なくはありません。尿失禁で悩まれている方、ハードコンタクトスポーツによる重度の外傷後のポストリハビリテーションの方・・・。しかし、日常生活は十分に送れ、運動を楽しむことができる方々がほとんどではないでしょうか?一般的にそのような方々にドローインが必要かと言ったら、“No!”です。

 フィードフォワード機能(あらゆる身体活動の前に腹横筋が事前収縮すること)が十分に機能している一般健常者ではドローインは必要でないばかりか、腹横筋のみのアイソレーション(分離)の再教育は時に安全性の低下にもつながりかねません。腹斜筋群の収縮を伴わない中部体幹の安定性は、十分なものとは言えないからです。

 この理論は、「ブレーシング」といいカナダのウォータールー大学教授で臨床医でもあるスチュアートマクギルが提唱しています。このテクニックは、脊柱を取り囲む腹直筋、腹斜筋群、腹横筋、多裂筋、広背筋、腰方形筋と脊柱伸展筋群を共同で活性化させ、安定させることを目的としています。ブレーシング中はお腹を凹ませたり膨らませたりせずに、腹腔を内側から押し広げるようにします。誰かに腹部を殴られそうになったときの身体の使い方をイメージしてもらえればいいと思います。

 ドローインと言うメソッドがブレーシングに劣るものではなく、元から対象が違うということです。現在のドローイン信仰は、このした背景を知らないドクターやトレーナーがつくり出した幻想なのです。

 スポーツパフォーマンスにおいてドローインのような身体操作をしたり、意識を持ったりすることは、感覚的に不自然で不慣れ感じがすることでしょう。それに対して、ブレーシングはものを持ち上げるなどの日常動作からあらゆるスポーツ動作における局面で体験する馴染みのある基本動作です。

 明日からは、ブレーシングが基本!




第12回 「スロトレは、機能もスロー」の巻(NEXT80号掲載)

 皆様、こんにちは。スポーツの秋です!東京五輪も決まり、私たちの仕事は今後益々成長し続けますね。まわりでも少しずつ、五輪関連の仕事が始まりつつあります。

 今回のテーマは、「スロートレーニング」です。このテーマは、連載当初から温めてきたものの1つでしたが、軋轢が生じる恐れもあり逡巡していました。多くの方々の要望を受けて、やっと書くことにしました。スロートレーニングは歴史も古く、その有用性が証明されている素晴らしいトレーニング法です。しかし、その有効性の基準は、筋肥大や成長ホルモンの分泌促進といったものがほとんどです。つまり、筋肥大を主目的としたボディービルディングのトレーニング法の1つとしては、間違いなく有効なのです。ボディービルダーは、いわゆる「効かす」という行為・意識を重要視している人がほとんどです。数々の先行研究により、意識しながらゆっくり動かすことで、意識しない時より筋肉に反応が出ることが筋電図により確認されています。また、筋肉を意識せずに動作に集中することで挙上重量が10 ~ 20%アップすることも確認されています。ひとつだけ勘違いしてはいけないのは、見かけと実際の違いです。『故意にゆっくり動かす』ことと、思いきり早く動かそうとしているけれど『重くて早く動かない』のでは、体内の反応は全く違います。

 通常、学生スポーツからプロアスリートまでのスポーツパフォーマンスや、高齢者の機能改善などのトレーニングの目的として、「筋力アップ」が掲げられます。しかし、筋力アップは、パフォーマンス向上のための手段の1方法に過ぎません。筋肥大は、そのまた下の概念で筋力アップのための手段です。本来の主目的である「パフォーマンスの向上」にとって、筋への意識は多くの場合弊害を伴います。最大伸展位で反射を用いず、動作ではなく筋肉に着目する「筋肉トレーニング」は、スポーツ動作のみならず、あらゆる日常動作からもかけ離れていると言わざるを得ません。「特異性の原理」から考えても、神経反応もスローに適応することが十分に考えられ、スピーディーな動きへの対応が難しくなります。第一、動きの基本は、いかに楽にやるかです。レジスタンストレーニングなら、重いものをいかに楽に上げるかです。

 「○秒かけてあげる、○秒止める、○秒かけて下ろす」
 う~ん、これでは動作の基本の正反対!伸張反射は、楽に、そしてけがをしないための神様からの贈り物なのです。例えば転倒のしそうになった時、踏ん張る筋力以前の問題として、素早い足さばきをして立脚する必要があります。「もし素早く足が出ていたら、踏ん張る筋力はあったのに!」という思いをお客様にさせないために、僕はスロートレーニングはやりません。

 実際、競技スポーツの現場でスロトレが採用されているところは僅かでしょう。そして、スロトレ提唱者の多くが、スロトレを自分では実践していないことも見逃せません。やってない、わかっている人にとっては当たり前の話でしょうが、まだまだ根強いスロトレ人気です。

 「筋肉スローで神経スロー、おまけに機能の向上もスロー」にご注意。
 元気に楽に上げましょう!




第11回 「中殿筋は、外転筋?」の巻(NEXT78号掲載)

皆様、こんにちは。まだまだ夏・夏ですね!僕の夏バテ防止は、チョコと牡蠣です。普通はどちらも冬のイメージかもしれませんが、1年中食べ続けています(夏バテ防止じゃなくて、タダ好きなだけでした…)。チョコ(勿論ブラック!)は体重と同じ70kg、牡蠣は年間1,200ピース(24kg)を年間で消費。どちらもかなりのヘビーイーターのお陰で年中絶好調!お気に入りのチョコはバニラビーンズのチョコレートドーナツ(ビックリの美味しさ!)、牡蠣はGIGAS(高田馬場)で週一の授業の合間に食べています。

今回のテーマは、「中殿筋」です。中殿筋は、殿筋群の中でも中間に位置し、股関節外転運動が主な機能とされ、前部は内旋、後部は外旋をすることでもよく知られています。また、ヒップアップにも重要な筋肉のため、フィットネスの現場でも重要視される筋肉ですよね。

しかし、実際のトレーニング種目としては、マシンアブダクション(座位外転運動) かサイドラインアブダクション(横臥位外転運動)の2種目しか見かけることがないのが、実情ではないでしょうか?

サイドラインアブダクションで中殿筋に焼け付くような感覚も得られ、マシンアブダクションも大変ですが、果たして十分な筋肉痛は得られていますか?筋肉痛が全てでないことは言うまでもありませんが、刺激がターゲット部位に十分に伝わっているという重要な指標になることも確かです。

こういったトレーニング法しか見出すことのできない原因は、“中殿筋は外転筋、だから外転運動で鍛える!”という考えから来ているのではないでしょうか。しかし実際には、座位や横臥位での外転運動は、日常・スポーツを通じてほとんど見ることができません。特異的観点から見ても、決して実践的トレーニングではないことがおわかり頂けると思います。

実際に、中殿筋は上記のような外転運動ではなく、片脚支持時における骨盤の安定筋として機能します。これは、歩行・走行時に絶えず繰り返されている動作です。その機能を鍛えるためには、その動作の延長線上で“過負荷”をかけてやればいいのです。

僕の場合は、「ダンベルシングルレッグデッドリフト」で行います。片手にダンベルを持ち、反対側を軸足にしてナロースタンスデッドリフトを片脚で行うのです。ポイントは、骨盤をできるだけ正面に向けたままで、上体を前傾しながら、浮遊脚を床ギリギリの高さで引いていきます。

通常、デッドリフトは、大殿筋、ハムストリングス、脊柱起立筋群などが主働筋とされていますが、この形で行うとナント!中殿筋のアイソレーション種目になるのです。バイラテラル(両側)とユニラテラル(片側)で行った場合に主働筋が変わってしまう珍しい例です。皆さんも是非やってみてください。翌日、驚きの反応が体感できるはずです。

大腿四頭筋はもちろん、大殿筋、ハムストリングス、脊柱起立筋群のいずれも筋肉痛ゼロ、中殿筋だけ“バキバキ”という人生初体験ができるでしょう。


以上、「中殿筋は外転運動な訳ないでしょ!片脚支持屈伸運動で鍛えよう!」でした!




第10回 「コアトレーニング至上主義」の巻(NEXT76号掲載)

皆様、夏ですね~。僕の中では夏といえば沖縄!(夏じゃなくても沖縄!)です。超主観的に沖縄最盛期は、梅雨明け6/25から夏休み前の7/19と夏休み終わりの9/5から海水浴が余裕で楽しめる10月上旬まで。このシーズンは、航空運賃・ホテルともそこそこ安くとても行きやすいです。今年は、ロングとショートを組み合わせて合計1か月滞在を目指しています。

今回のテーマは、「コアトレーニング」です。コアトレーニングという言葉を聞き始めて、10年くらい経つでしょうか?個人的には、流行語のようにそう長くない期間で聞かなくなるように思っていましたが、予想は見事に外れました(よくハズレます…)。前回の連載では一般的に理解されやすいように敢えて使いましたが、僕自身が「コアトレーニング」という言葉を使うことは滅多にありません。「コアが重要」的なフレーズを聞く度に何となく違和感があります。

それは決して反対意見ではないのですが、重心を含む身体の中心部にあり、上肢、下肢、頭部に比べ圧倒的な大きさを占める部分が、重要でないわけがないからです。声高らかにして言うほど、凄くも新しくも感じないのです。例えば、英数国の3科目で合計500点の試験があったとします。そのうち英語の配点が300点だとして、「その試験に合格する秘訣は、英語です!」と自慢げに訴える塾長。魅力的ですか?といったイメージです。また、「コアトレーニング」があるということは、「コアトレーニングではないトレーニング」があることになります。僕の中では、全てのトレーニングにコアを使うので、取り立てて「これがコアトレだ!」みたいなものは存在しません。スクワットは、トップで腹横筋、ボトムでは菱形筋を意識し、アムカールは脊柱起立筋群から始動させます。プレスダウンですら広背筋先行です。実は、「コアトレじゃないトレーニング」を探すのは、困難を極めるのです。

ここまではつぶやき程度に読んでいただければよいのですが、今回記事にしたのは「コアトレーニング偏重主義」による四肢の傷害(特に肘、膝)が散見されるからです。特に、アスリートの場合は要注意です。一般的に認知されているいわゆるコアトレを行っていると、どうなるでしょう?例えば投手の場合、当然足腰の強化プラス体幹トレーニングをやれば、狙い通り腕の振りは速くなります。おまけに特異性の原理にならって、上腕三頭筋まで鍛えたりして…。おそらく、肘を痛めることになるでしょう…。ブレーキのことを考えないアクセル全開の特異的トレーニングの典型的な末路です。

ここでもう一度立ち返らなければならないのは、バランスと協調です。先程の例であれば、上腕二頭筋も鍛えるべきでした。物事には全て裏が存在しますから、表面上必要ないように見えるこの筋が肘を守ってくれています。そして、利き腕と反対側の広背筋を鍛えます。利き腕側の広背筋の過剰発達が肩峰を下げ、骨盤の側方挙上を誘発し、腰痛の原因になるからです。包括的視点から筋の最適バランスを模索して、キネティックリンクに則った動作で鍛えることで、動作は劇的に変化を遂げます。

「コアトレ」恐るべしです。みなさん、気を付けてくださいね。




第9回 「流行の筋肉?すたれる筋肉?」の巻(NEXT74号掲載)

皆様、こんにちは。日増しに暖かくなってきて、身体が動きだしたくてうずうずしているのを自然と感じられますね。ビジネスでもプライベートでも、家中(ホームトレーニング)・街中(散歩に自転車)・日本中・世界中を動きまりましょうね!

今回のテーマは、「筋肉」です。我々の仕事にとって筋肉が最重要要素の1つであることは、異論のないところだと思います。筋出力が筋力を決め、筋の柔軟性がROMの決定を大きく左右します。私自身がこの仕事に携わるようになってから27年間、その筋肉には常に流行のようなものがあったように感じます。お尻(大殿筋)が大きいことが選手の優劣を現すだとか、ローテーターカフが肩の障害の原因であるとか、走力に一番重要なのはハムであるとか大腰筋であるとか、やっぱりインナーマッスルだの腹横筋だの…。このように時代時代により、流行の筋肉は移り変わってきました。本来は人の体がここ20 ~ 30年で劇的な変化を遂げたわけではありませんので、筋肉に流行のようなものがあるのはおかしな話です。

とはいえ、今まで陽の目を見なかった色々な筋肉が注目・研究され、現場で試行錯誤が繰り返されるのはいいことだと思います。これら日本における“流行筋”は、実はそのほとんど(全て?)がアメリカから5 ~ 10年遅れて入ってきたものばかりです。近年においては、留学者の増加、情報網の発達などによりそのスパンが短くなったものの、未だその感は拭えません。

ただし、私が知る限りアメリカで注目され、日本でほぼ無関心の筋肉が1つだけあるのです。何故かは今回の不思議ポイントですが、筋の部位的な問題で日本ではタブー意識のようなものがあるのでしょうか?

それは「恥骨尾骨筋」です。英語では一般的に PC muscle(pubocoxygeal m.) と言われます。PC筋は、3つある肛門挙筋の内の1つです。

肛門挙筋は、運動学から見ると骨盤底筋群の中でも中核をなす筋肉です。元々は、医療分野で注目され始め、産婦人科ではお産によるPC筋の損傷や過度の伸張(元来、柔軟性が高い筋肉だが出産により過度の伸張を起こす)に対するリハビリテーションとして、泌尿器科では加齢による勃起力の低下やEDに対する運動療法として、以前から注目されていました。また、PC筋は、体幹の中心深部に位置するため骨盤の安定や腰痛との相関性も高く、「コアトレの基本」として10年ほど前から私自身も取り組んできました。PC筋トレの方法は至ってシンプルで、「排尿中の中断感覚(もしくは意識)」の繰り返しです。その際の、注意点は大殿筋などの他の筋肉と連動させないことです。PC筋のみのアイソレーショントレーニングに慣れたら、セカンドステップは運動の起点に「PC筋意識」もってくることです。特に、股関節の屈伸運動とのコンビネーションは有効です。具体的には、スクワットのボトムに向かう過程で「排尿意識」をもち、ボトムに到達したら「排尿中断意識」をもってから立ち上がり始めるといった具合です。運動中の骨盤の安定、腰痛の改善、男女ともに性機能の向上など効果は絶大です。また、歩行中は勿論、立位、座位など場所や時間にとらわれず、誰にも気づかれず行えるのも「PC筋トレ」の特徴でしょう。

“PC筋を制する者が、コアトレを制する”皆さんも「コアトレの基本」として、明日からの指導に取り入れてみてください。




第8回 トレーナー・インストラクターが健康を語る?(NEXT72号掲載)

今回のテーマは、基本の「健康」です。

我々の周りには“健康”関連用語だらけです。管轄省庁である厚生労働省が「第1次国民健康づくり対策(S.53 ~ 63年度)」以来、健康づくりの基本的な考え方として3要素(栄養、運動、休養)の増進を掲げていることは皆さんご存知だと思います。トレーナーとしても、運動に加えて栄養や急用の指導をするケースはよくあるものの、その内容は不十分なことがほとんどです。

例えばトレーナーがする栄養指導の中身は「バランスのいい食事を心掛けましょう」「油分や砂糖を控えましょう」といった類がほとんどです。しかし、こういったアドバイスの内容を知らないクライアントがいるでしょうか?重要なのは、たとえば「どうしてもチョコが食べたくなったら、原料の一番最初にカカオがきているこのチョコ(現物をプレゼント)がお奨めです。スーパーで350円で売っていますよ。」「結構高いですね」「だから大事に食べるんですよ」…。といった具体的ソリューションの提供です。このやりとりは実際に僕がよく行っている会話例です。(因みに「チョコレートは…♪」の製菓会社に12年勤めていたので、チョコに関してはセミナーをやるほど詳しいです)。

休養に関するアドバイスは、更におざなりになりがちです。「できるだけ早めに寝ましょう」「枕がフィットしていないと肩が凝ります」…。これもみんなが知っている当たり前の話。肩こりの方がパーソナルトレーニングで「スッキリ~!軽くなったわ(笑顔)」と、お客様、トレーナーともに満足…よく見る風景ですよね。でも僕だったら表面上笑顔を繕ったとしても、内心は(またダメだった…)と感じます。先週もこのフレーズを聞いていたからです。これでは、「ヨーヨーダイエット」ならぬ「ヨーヨー肩こり改善」です。スッキリしたものが、繰り返しこるのであれば、僕なら睡眠時の姿勢に問題ありと見ます。なぜなら、睡眠時の姿勢がきれいに保持されている人は、ほぼ皆無だからです。睡眠時の理想姿勢は、仰臥位の場合は頸椎に屈伸がないこと、横臥位の場合は立位や仰臥位と違い脊椎の屈曲は問題ありませんが、頚部側屈がないことが最低条件です。横臥位では肩支持になるため、かなりの高さがないと頭頂部が落ちることになります。この両方を満たすには、枕に相当な高低差が必要になり、通常の枕では不可能です。そのため、頚神経16本中横臥位で上側になる8本が、引っ張り続けられ、様々なトラブルを誘発します。

このことには以前から気が付いていましたが、有効なソリューションがなく困っていました。しかし、最近これを解消する自動で高さが変わる枕があるのを知り、自ら使ったところ快適の極み!早速、お客様にご紹介し、「ヨーヨー…」を脱した方が何人もいます。

運動のみを指導していれば30%、栄養のみを指導していても30%、休養のみの場合でも30%しか、お客様を健康へ近づけることはできません。オプティマルヘルスのためには、3要素の和合がキーポイントです。是非皆さんも、30%、60%の健康づくりではなく、相乗効果で100%の健康づくりを目指してみて下さい。




第7回 バルサルバ呼吸(NEXT70号掲載)

今回のテーマは、皆さん良くご存じの「バルサルバ呼吸」です。重たいものを持った時の息みのことですね。以前よりバルサルバ現象に対する間違った理解とそのことによる現場における指導には、目に余るところがあり今回のテーマにしました。
本来は、筋の出力に伴う息みによる、血圧上昇のこと「バルサルバ現象」、普段より筋力が発揮できることを『バルサルバ効果』といい、その際の息み(呼吸の停止)のことを「バルサルバ呼吸」と言います。因みにバルサルバとは、この効果を発見したイタリアの解剖学者、アントニオ・マリア・バルサルバ (Antonio Maria Valsalva, 1666~ 1723) から名付けられたものです。
息を止めて、力むと、腹部の筋群、骨盤底筋群、声帯、口唇などが緊張を起こし、息まない時以上に重たい物が持てます。ス
ティッキングポイント(エクササイズ中に最も大きな力が必要な部分)の通過や火事場の馬鹿力にも、バルサルバ呼吸によるバ ルサルバ効果は欠かせません。 
しかし、現場での『バルサルバ効果』に対する認識は、事実とは相当異なるためおのずと実際の指導は、不思議(奇妙?…)な感じになってしまっています。例えば、レッグプレスの際の「息を吸いながらゆっくり引いて、吐きながら押します」。珍しくないフレーズだと思いますが、明らかに変です。高重量でなくても10RMの後半で吸い続けながら伸張性収縮を行うことは困難ですし、万が一できたとしても危険です。息を止めるからこそ体幹の筋群(特に骨盤底筋群や腹部の筋群)は、固定・安定し、筋力の発揮が容易になるからです。
『カパンディ 関節の生理学』という本の中では「膝を屈曲し体幹を垂直にして10㎏の重量を持つと、力S1(仙骨にかかる力―引用者)は傍背柱筋に141kgの負荷を及ぼす。」と述べられています。たった、10㎏で141kgです。
さらに「椎間板を破壊するのに必要な力」は「(若年者で800kg、年配者で450kg)」と怖いことが書いてあります。しかし同書によると、この力は2つの効果で分散されるそうです。ひとつは椎間板によって髄核に75%、線維輪に25%分散され、更にバルサルバ効果によって「呼吸筋群、腹筋群の収縮で胸腹腔を閉鎖された腔にする。このようにして胸腹腔の内圧が著明に上
昇すると、脊柱の前面は堅い梁に変わり、骨盤や会陰に力を伝達させる。この膨張構造の存在によって椎間板に作用する長軸方向の圧迫力を著明に減少させている」とのことです。
最近の文献では、「バルサルバ効果のためにはバルサルバ呼吸もやむを得ない」というような記述も増えてきているようですが、やむを得ないというよりバルサルバ呼吸をしない方が危険です。
かと言って、初めてウエートトレーニングする人の中には、呼吸を忘れたがごとく、呼吸を止めて行う人がいます。こういった方の場合の、初期の導入時には、「息を止めない」呼吸法も必要になってきますが、基本あくまで“バルサルバ”なのです。