My Dream,My Business ~ビジネスで夢をかなえる~

安光達雄さん
PCY limited liability company代表取締役
Made in Japanのハイクオリティとハイパフォーマンスを追求する
安光達雄さん Profile
PCY limited liability company代表取締役。1967年神奈川県小田原市生まれ。世界のトップアスリートやトップアーティストにストレングス・フィジカル&コンディショニングを指導。ヨーロッパやアメリカをはじめとする海外のトレーニング研究も行いながらドラウタビリティやスタビライゼーションなど、自ら開発したオリジナルなmade in Japan のトレーニングメソッドを世界に発信している。1993年、PCYを設立。2001年NPO法人日本スタビライゼーション協会を設立。現在は順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士課程にも所属。

起業は仕事を増やすためのワンステップ
高田馬場駅から住宅街の抜け道を歩くこと約10分。大通りに抜けると、そこに真っ白な4階建てのビルが目に飛び込んでくる。PCYの自社ビルだ。その白い壁には「P e a c eC o m f o r t a b l e Y a r d 」という文字が刻まれている。夏の暑い日ざしに爽やかに映え、夜にはそれがライトアップされて道行く人々にひと時の安らぎを与える。「平和で穏やかな場所」。その頭文字のPCYに安光達雄さんはどんな思いを込めていたのだろうか。
 会社の設立は1993年。25歳の時である。設立経緯は至ってシンプルだ。 「当時既に『ストレングス&コンディショニングトレーナー』として活動していましたが、日本では、フィジカルトレーニングと、ケアなどのコンディショニングの両方ができる人が少なかったことと、バブル経済の真只中で実業団チームのトレーナーニーズが高まったことが重なり仕事が急増したんです。1人ではとても引き受けられなくなり、チームで対応しようと始めたのが任意団体のPCY。ですが、その後バブル経済が崩壊。仕事が1つ1つ減っていく。できるだけ安定した仕事を得たいと、公共の施設や団体、学校などの仕事を増やそうと思った。そのためには法人格が必要だったので、その団体名をそのまま会社名にしたのです。ですから、会社の設立も起業したいと思っていたわけでなく、ただ仕事を増やすため、いろんなことができるようにするための一つのステップという感じでした」
PCY(平和で穏やかな場所)という名称の由来について尋ねると、「何か、世知辛い世の中じゃないですか」と笑顔で答える。極めて自然体な社長である。
一貫して、何でもやる
一見いろいろなことをしているように見えるが、安光さんがやろうとしていることは一貫している。それは「スポーツ・トレーニングの世界で、ハイクオリティ、ハイパフォーマンス」を追求すること。そしてm a d e i n J a p a n に拘り、世界にそれを発信していくこと。それを様々な形で実現してきた。
高校生の頃、「発展途上国のスポーツ・トレーニングの指導者になりたい」と教員免許がとれる大学に進んだものの、退屈な授業に失望。専門学校において、集中的に勉強した。資格も次々に取得し、その数はついに17にも及ぶまでに。その後、静岡県の民間フィットネスクラブでトレーナーの第一歩を踏み出すも、すぐに地域の実業団チームからトレーニングコーチへの声がかかるようになった。1年間このクラブを拠点に活動した後、知人から台湾にある障害者の施設でリハビリテーションを担当してくれないかと誘いがあり、「これはいいチャンス」ととびついた。ここで台湾の優れた治療院(整体院)の先生について勉強する機会を得て、帰国後柔道整復師の資格も取得。ストレングスとコンディショニングの両方を知るトレーナーという強みの基盤がつくられた。
ここからはいろいろな分野においても仕事が拡大していく。ストレングス&コンディショニングトレーナーとしては実業団チームだけでなく、Jリーグなどのプロチーム、海外の競技チームからも声がかかるようになる。クライアントもチームから個人へ広がり、スポーツだけでなく芸能人や一般生活者にもニーズが広がってトレーナー派遣をスタート。海外での活躍が日本のメディアに注目され、テレビや雑誌への出演機会も増える。その経験を活かしスポーツモデルのマネジメントや番組制作コーディネイトなども手がけるようになる。その間、自社直営の接骨院もオープンした。法人化する時に思った「いろんなことをしたい」が現実となった。 「当初は、本当に何でもかんでもやっていたという感じです。それを徐々に整理して、現在は3本柱にまとめています。トレーナーの派遣や養成を中心としたスポーツプロダクツ部門、接骨院の運営を中心としたケア部門、そしてマスメディアなどを中心としたクリエイト部門です。3年ほど前に学生時代からの恩師で現順天堂大学の野川春夫教授に声をかけていただいたことをきっかけに、現在は生涯スポーツに関する研究やプログラム開発をするR&D機能に力 を注いでいます」
よりよいものを追求する
現在、安光さんが最もエネルギーを傾けているのが、この研究開発。かねてから取り組んできた「スタビライゼーション」や「ドラウタビリティ」が研究テーマ。「ドラウタビリティ」とは、「身体能力を引き出す」という意味の「ドラウト(D r o u t )」に、「能力」という意味の「アビリティ(A b i l i t y )」を組み合わせた、安光さんによる造語。その名の通り、個人個人の身体能力を引き出し、その能力を引き延ばすフィードバックメソッドを安光さんが考案したものである。「これまで長くトップアスリートのトレーニングに関わってきて、この分野の仕事はおもしろいし、多くのトレーナーも憧れる仕事だと思いました。ただ、トップアスリートはある意味、ほぼ完成された状態。その完成形のピークをもっと高くしたいと思うと、ゴールデンエイジと呼ばれる9�12歳の時期に、いかに能力をのばせるかが一つの鍵になっているんです。そこでおもしろく楽しく能力が引き出せる方法を考案して、その年齢の子どもたちの運動指導に携わっている方々とそのノウハウを共有したい。そんな思いからこのプログラムの開発をスタートしました」
具体的には、カラフルなドラウト・ナンバーディスクや、ドラウト・クロスといったツールを使い、脳と身体の反応を複合的に高めていく。各種ツールも持ち運びができるため、屋外でも屋内でも気楽に楽しめる。ツールの大きさや安全性を変えることで、高齢者でも取り組むことができるようにするなど、どの年齢層の人でも身体能力が引き出せるように開発を進めている。現在は、このドラウタビリティの有効性を実証するエビデンスをまとめ、学会などにも発表している。野川春夫教授と共にプログラムを確立させる研究を行っている。
スポーツ一筋に見える安光さんであるが、実はもう一つの顔がある。「M I G H T YDIN」のブランドで展開するTシャツをはじめとしたアパレルなどのクリエイターである。自身「実はスポーツよりデザインが好き」と話す通り、生地にも染色にも拘り、m a d e i n J a p a n に拘りながら、スポーツ業界のアルマーニを目指しているとか。「MIGHTY DIN」とは、「力強い音=大歓声」という意味がある。ハイパフォーマンスを生み出す人物を包む大歓声。安光さんのプロデューサーとしてのロマンが感じられる商品だ。
完璧はないが、妥協はしない
会社設立から15年。浮き沈みもあったというが、自然体で、自分の追求したいことに素直に向き合ってきた。それが自社ビルを構えられるまでの会社に成長させた要因なのだろう。これまでの自己評価と今後の目標を訊いてみた。
「これまでも今後も、『当たり前のことを当たり前にやる』ことを続けることなんだと思います。例えばトレーナーとして、自分が見本であるために自らもトレーニングする。これは当たり前のことです。いいものを提供しようと研究したり、情報を集めたりするのも一緒。ただ、当たり前のことを続けることが大変で、いかにそれをやり続けられるかだと思います。これからも、先人の方々が提唱してきたトレーニングやケアが本当なのかを確かめ、もっといいやり方があればそれを提供していきたい。世の中に完璧はないものの、妥協したらそこで終わりだと思います。経営者としても、本物を追求することは投資だと考えて積極的に行っていきます。逆に妥協することはクオリティを落とし、信頼や信用を失うことに繋がるから決してしない。これからもm a d e i n J a p a n のハイクオリティ、ハイパフォーマンスのプログラムや商品を提供していきたい。そのために、自分自身もハイクオリティ、ハイパフォーマンスを目指す自分であり続けたいと思っています」
名前PCY limited liability company
所在地 東京都新宿区百人町4-6-1
Tel.03-5330-8568
ウェブサイト http://www.pcy.co.jp/
設立 1993年4月30日
資本金 300万円
組織 (役員)3人(従業員)4人 (契約トレーナーを含めると11人)
収支構造
売上)スポーツプロダクツ収入、ケア収入、クリエイト収入の3本柱で比率はほぼ同じ (経費)N/A

名前
スタビライゼーション
ドイツをはじめ欧米などで行われていた医療体操などを元に開発したプログラム。主働筋メインのトレーニング法ではなく、主働筋・協働筋・拮抗筋や補助筋群(スタビライザー)も刺激する。コーディネーション能力を向上させ、体幹(コア)と四肢の安定性を高める。

ドラウタビリティ
「ドラウト(Drout)」とは、「身体能力を引き出す」という意味。個人個人の身体能力を引き出し、その能力を引き延ばすフィードバックメソッド。ドイツ代表のトップアスリートや世界各国のアスリートも行い成果を出している。

MIGHTY DIN
安光さんデザインのブランド。素材や製作もmade in Japan に拘り、クオリティ重視でスポーツ業界のアルマーニを目指す。アライメントTやリストバンドなどシリーズも続々登場。