My Dream,My Business ~ビジネスで夢をかなえる~

牧 直弘さん
有限会社MAKIスポーツ 代表取締役
発想力と探究心で、自分にしかできないことをしよう
牧 直弘さん Profile
1959年生まれ、東京都出身。学生時代は劇団を主宰、音楽の方面でも幅広く活動。1990年、都内のスポーツクラブにてチーフインストラクターとして活躍する。1996年、フリーインストラクターとして気功、太極拳、護身術、操体法、カンフーシェープ、中国整体などを指導。2006年にフィットネスツール「ウェーブストレッチ・リング」を開発し、有限会社MAKIスポーツを設立。現在も都内のクラブを中心に、指導者として現場に立っている。

独自のツールで広げる、エクササイズの可能性
健康な背骨は、緩やかなS字型のウェーブを描く。これは「生理的湾曲」と呼ばれ、この湾曲が大きすぎても小さすぎても体の不調につながる。背骨だけではない。骨盤、肋骨、足の甲など、人間の体には重要なウェーブがいくつもあり、それが私たちの健康を維持するのに大きな役割を果たしている。「ウェーブストレッチ・リング」(以下、WSリング)は、握ると手に吸い付いてくるような不思議なフィット感がある。それは、この絶妙な湾曲が、私たちの体に生理的に馴染み深いからなのかもしれない。
コンパクトながら、500通り以上のエクササイズが可能というこのWSリングは、クチコミをベースにファンを増やした。現在、100店舗以上のフィットネスクラブで、このツールを使ったスタジオプログラムが提供されている。
有限会社MAKIスポーツの牧直弘さんがWSリングを開発したのは2004年。中国武術で使われる円形のツール、「ラタンリング」にヒントを得たことがきっかけだった。武道、スポーツ、ダンスとさまざまなジャンルに長年精通した牧さんは、当時フィットネスクラブのチーフインストラクターを経てフリーインストラクターとして活動していたが、「ツールを有効に使うことで、もっとエクササイズの可能性を広げることができるはずだ」という確信があった。牧さんはホームセンターで買ってきたホース状の「ジャバラ」を使って、自分でいろいろな形をつくって試してみることにした。何度も何度も形を変えて試行錯誤を繰り返すうちに、現在の形にたどりついた。
操作性が高く、握りやすく、立体的なひねりが体のあらゆる曲線にフィットする。エクササイズだけでなく、ストレッチ、マッサージと、驚くほどバリエーションが広がった。このとき、「このツールをできるだけたくさんの人に伝えることが自分の使命だ」と牧さんは確信した。 製品の流通を他社に任せてしまうと、会社都合で製品が犠牲になってしまうことは少なくない。それを避けるためにも、WSリングに対する知識と愛情がある自分たちが責任を持って販売も行うべきだと考え、会社設立を決意。資金調達には東京都中小企業振興公社を利用するなどして、できる限りしがらみのない状態で会社をスタートした。これもまた、製品を大切にしたいという思いからだった。2006年にWSリングの特許を取得して、有限会社MAKIスポーツを立ち上げた。
「商品を売る」から「人を育てる」へ
「このツールはすごい、商品化すればすぐに売れるだろう」。そんな牧さんの直感は、見事に外れてしまう。
牧さんが感動すら覚えたWSリングの形状に、当初はほとんどの人がピンとこない様子だった。展示会に出展するなどして販促活動を進めたが、結果は惨敗。しかし、このピンチが牧さんのターニングポイントとなる。
 なんとか苦境を脱したいと考えをめぐらすうちに、商品を売ることばかりに目を向けていた自分の過ちに気づいたのだ。牧さんがやらなければいけないことは、商品を売ることよりも先に、プログラムを育て、人を育てることだった。
「WSリングは、そのオリジナル性が最大の売りです。それだけに、ただモノを売るだけでは、2~3回使って終わりになってしまう。それでは長く売れる商品にならないし、なにより開発者としていちばん悲しいことです。焦らず、確実に、商品の良さを伝え、使い方とプログラム展開のバリエーションを伝えていこうと考え方を変えたんです」
 それからは、プログラムの指導者養成に最大の力を注ぐことに決めた。何人かの代表的なフィットネス指導者がWSリングのファンになってくれたことで、プログラムはクチコミで広がっていった。養成コースには全国から参加希望者が集まり、現在300名以上が指導者認定資格を取得、6名がマスタートレーナーの資格を取得している。指導者から会員へ、会員から会員へとクチコミが広がり、商品も次第に売れるようになった。クラブへの導入が決まっていったのも、きっかけはクチコミがほとんどだったという。
「実際に使ってもらうことで、分かる人には必ず分かってもらえます」そう話す牧さんは、現在もスタジオプログラムを週7本、研修・養成を月10本、自ら指導している。それがなにより効果的な販促活動なのかもしれない。
インストラクターは創造者である
WSリングを手にすると、途端に牧さんの顔に輝きが増す。創造力豊かな子どものような表情になるのだ。
「体調が改善した」、「WSリングに命を救ってもらった」という嬉しい報告が寄せられるたびに、このツールが人の輪をつなぎ、その輪から自分がパワーをもらっている、そんな実感があるという。現在は海外の特許申請も出願中。牧さんの夢は、海外で日本生まれのツールとプログラムが人々の健康に役立ち、そして人々に愛されるようになることだ。
「私は45歳でこのツールを開発してから、いろいろな場所で仕事をさせてもらうチャンスをいただきました。これは天からの“ご褒美”だと思っています」
 東急ハンズでの商品展開や『カタログハウス』などの通販雑誌での取り扱いも始まり、2008年6月にNPO日本ウェーブストレッチ協会を設立。同年12月にはガイド本『ウェーブストレッチエクササイズ』(BABジャパン刊)を出版、DVDの販売も始めた。確実に認知は広がっているが、できるだけ長い商品寿命を目指し、2年後にブレークポイントが来るように流通をコントロールしながら、いまは足元を固めている段階だと牧さんは話す。
 現在はWSリングを使ったヨガ、ピラティス、ウォーキング、太極拳などさまざまなジャンルのプログラムを提供しており、足裏ストレッチのプログラムも開発中。牧さんのバイタリティが、ツールの可能性を無限に引き出している。
「インストラクターの仕事は、周囲の人を健康にして自分も健康になれる、最高の仕事ですが、その可能性を十分に活かせていない人も多い。単に指導するだけにとどまらず、“インストラクターは創造者である”と意識して、自分にしかできないことを見つけてほしい。発想力と探究心で、自分の可能性をどこまでも引き出してほしいと思います」
名前有限会社MAKI スポーツ
会社名の由来 代表取締役 牧直弘さんの名前から
所在地 東京都世田谷区北沢5-3-13 こみねビル3F
Tel.03-3227-3622
ウェブサイト http://www.maki-wavingstretch.com
設立 2006年3月10日
資本金 300万円
組織 社員2名
収支構造
(売上)養成コース、プログラム講師料、商品販売
(経費)販売管理費、人件費

名前
ウェーブストレッチ・リング
牧直弘さんが開発し、2006年に特許を取得したフィットネスツール。ひとつのツールで(1)ほぐし(2)伸ばし(3)引き締めを行うことが可能で、横浜ベイスターズといった球団のほか、プロゴルファーなどのアスリート、中高年のセルフケア・姿勢改善にも活用されている。このツールを使ったスタジオプログラムは、100店舗以上のクラブに導入されている。

書籍・DVD
ウェーブストレッチ・リングを使ったエクササイズメソッドを紹介。美しく機能的な曲線のある体、「美アーチ姿勢」をつくるために必要な3つのステップを解説している。